沖交のゴロー

携帯電話の中の画像を整理してたら出てきた。
沖交のゴロー。2年前の写真。

実家の斜向かいに沖縄交通ってタクシー会社があった。
少し前に無くなって、今はマンション建設中。
沖交のゴローはそこで飼われてた犬。
というより、タクシー会社のオッサンたちが餌をくれるから、野良が居着いてた、という感じ。
俺が学生の頃、タクシー会社のオッサンの悪ふざけか、油性ペンで、ぶっとい眉毛と、横腹にでっかく“沖交”と書かれてた。
ひどいな、と思いながらも爆笑した。
その一件で、俺の中でゴローは“沖交のゴロー”になった。

とはいえ、特にゴローと親しかったわけじゃない。
食べ物を与えた記憶もないし、たまに頭を撫でたくらい。
短毛で、洗われないせいか、いつもゴワゴワ。
タクシー会社が無くなるより前に、ゴローは姿を見せなくなったから、去年あたり亡くなったんだろう。
俺が知ってるだけで、十年以上居たし。
思えば、東町も様変わりした。
海邦国体のボウリング会場だった、国際ボウリング場もパチンコ屋になり、駄菓子を買いに走った赤嶺ストアーも今は無く。
人の営みは、目まぐるしい。
そこに在ったもの、そこに居た人、瞬く間に流れ消えていく。
いつか誰の記憶からも、無くなってしまうんだろな。
そう思って、老犬となったゴローにカメラを向けた。
いつか俺も、ゴローの事を忘れるかもしれないし、俺自身が亡くなる日も来るけど。
そこにゴローが居た事を、大事にしてあげたいと思う。

沖交のゴローに捧げる。