作品に込める思い

  沖縄県立芸術大学では、ビジュアル・コミュニケーション・デザインを専攻し、現代的なグラフィックデザインを学びました。しかし同時に、浮世絵やバリの影絵、螺鈿細工や紅型、縄文土器や風水といった、アジアの伝統文化にも魅了されました。

 

 大学卒業後は、地元に貢献できるデザイナーになるためにあえて沖縄を離れ、東京の広告代理店でグラフィックデザイナーとしてキャリアを積み、そして6年間後に帰郷しました。

 

 そして戻った沖縄で体験した、南国ならではの自然の豊かさや生命の逞しさ、そして地に根付いたシャーマニズムに感銘を受けて、30歳から仕事の傍らに絵を描き始めました。

 

 創作のテーマは「目に見えないものへの畏敬」。

 

 東京時代に感じた、お金や商品や科学といった、目に見えるものばかりを盲信する現代社会への危惧から転じて、目には見えない生命の持つ精神世界を、その生命の内側に描くというスタイルに到達しました。

 

 そしてその精神世界の根幹である、自然や生命の豊かさを表現するため、かつて興味を持ったアジアの伝統芸能に目を向けました。

 

 陰陽や文様など、アジア的なエネルギーを作品に織り込むことで、作品が“気”を纏うこと、そして鑑賞者が内なる宇宙へと意識を向けることを狙っています。

 

 私の作品は文様によって輪郭が欠けています。それは鑑賞者に想像力で輪郭を補完してもらうことを狙っています。またアニミズム的な作品世界は、目に見えないものへ想像力を向けることを狙っています。

 

 そうして鑑賞者の想像力を刺激することが、感性と精神の充足に繋がると信じているからです。